Hinako Journal

ヒナコ・ジャーナル(Over50な妙齢のヒトリゴトやオモウコト)

解約できなかった母の携帯電話、そして今

机の上を整理しているときに母の携帯が目に入った。文字が大きくできる高齢者向きの二つ折りの携帯電話だ。 母は私や息子が使っているスマホを見ては「私もスマホにしたい」と言っていた。そもそもスマホで何ができるのか知らない母に必要なものとは思えなかったが、世の中的にも楽しそうに使っている姿を見て欲しくなる気持ちはわからないではなかった。母のためにスマホを契約したことがあったが、手が震えることで「電話」ボタンが押せない。スマホのキーボードが物理的なボタンでないために打てない。ボタン一つで電話ができるようなショートカットなどを作ってみたがやはりそれでもうまく使えなかったために二つ折りの携帯電話に戻した。母は難病を持って病状が進行し薬がきれて苦しくなるとこの電話に設定してあるワンタッチボタン「1」を押して私を呼び出すことが多く、亡くなる直前まで時間に関係なく「1」を押し続けていた。

母からの着信を見ては心の中でため息をついていた。

今思えば苦しくて助けを求めていたのだろうと思うが、その時にはその苦しみがわからなかった。たぶん日々のことだったので「また」みたいな思いだったのかもしれない。いまさら悔いても仕方ないが私の中では消化できない思いがある。 亡くなった直後に一度キャリアショップに行き解約手続きをしたが「契約が二年縛りなので今解約すると高いですよ。まずは契約を二年縛りから別の契約に変えますので来月以降であれば普通に解約できますよ」と言われたためにその時は一旦契約を変え改めて解約することにした。 ただ、今でも解約していない。 時々充電をし電源を入れておく。誰かからこの電話に着信があることはなく、もちろんこの電話から私に着信はない。母への思いを悔いているのかはわからないが、もう少しつながっていたいのかもしれない。

 

 

それから約2年が経った今日母の携帯を解約した。月に1,000円程度でありながらも使っていない携帯代金を払い続けることに意味があるのだろうかと思ったからである。手続きはあっという間に終了した。

でもつながりが切れたとは思っていはいない。ただ母への色々な思いがリセットされたような気がした。