ミステリー好きなら誰でも知っている定番なタイトルであり、新本格ミステリーの綾辻行人のデビュー作である。最近では映像化すると話題になっていたのでミステリーに興味のない方も聞いたことがあるのではないだろうか。映像化されたものはまだ拝見していないが誰もが「映像化不可」と思っていた作品のためどのように実現したのかとても興味がある。
そもそも「本格」ってなんだろう。またその本格に新がついて「新本格ミステリー」である。駅名でよくありがちな「新」をつけるというそれと一緒だろう。まあこれらはミステリー界の概念らしい。
初めて読んだのはだいぶ昔の話である。
それまでミステリー系は、赤川次郎などの比較的軽いタッチのものしか読んだことが無かったこともあり、なかなか頭に入ってこなかった。 この作品の中では、ミステリー研究会のメンバーが登場人物となっているが、それらのメンバーは、海外ミステリー界で有名な作家の名前を名乗っている。
「アガサ」とか「エラリー」とかである。
まあ、源氏名みたいなものだろう。ミステリー研究会だったとしてもそんな名前をつけるのかとセンスを疑ってしまうし、その名前で呼び合うというのは恥ずかしくないのだろうかと思った。 当時は海外ミステリーに興味が全くなく、作家の名前を言われてもほとんど知らなかったため、登場人物の名前と特徴がなかなか一致せず頭の中で映像化することができなった。
あらすじや感想についてはネットを調べるとたくさんでてくる。ここでは別の視点から見た感想を書こうと思う。
まず「十角館」という「十角」はなかなか見ないものである。身近でみるものは六角形までで、そんなに角を作ったら円に限りなく近くなるんじゃないかと思う。その十角形という形を生かした部屋、カップなどこだわりがあり当然事件にも関係するものである。 また最後から何ページか前に衝撃の一文がある。 その一文はあまりにあっけないものであるが、だからこそ衝撃であるとも言える。
いろいろとツッコミどころを書いてみたが、今でも時々読み返すくらい面白い。 今では犯人もわかっているが読むたびに登場人物の心理状況などがとてもうまく表現されているなと思える。
館シリーズとしてこの十角館の殺人を含めて9作品ある。どの作品も殺人方法が狂気に満ちているが、レギュラーの登場人物がでてくる場面は比較的コミカルにかかれており、食休めの役割をしている。 個人的には、この「十角館の殺人」と「暗黒館の殺人」が印象に残っている。 暗黒館の殺人については賛否が分かれるところであるが、十角館の殺人がエピソード1ならば、暗黒館の殺人はエピソード0のようなものである。
次回の館シリーズがでるのかでないのか。あと一作でよいので、新しいシリーズを読みたいと思っている。